都市の真ん中に生まれた“動く電力拠点”──Mobile SSの取り組み
Mobile SSプロジェクトチームは、世田谷区池尻大橋にある複合施設「HOME/WORK VILLAGE」に、移動式ソーラーステーション「Mobile SS(モバイル・エスエス)」を設置しました。
この施設は、住宅・シェアオフィス・カフェが一体となった、働くことと暮らすことが交差するコミュニティ拠点です。
その中でMobile SSは、自然エネルギーを活用しながら、日常と非常時の両方に機能する“電気のオアシス”として新しい役割を果たしています。
日常の中に溶け込む、非常時インフラを目指して
私たちがこの場所にMobile SSを設置した背景には、「防災」と「日常」を分けないまちづくりの考えがあります。
HOME/WORK VILLAGEでは、普段から地域の方々が立ち寄り、コワーキングスペースで仕事をしたり、屋外でコーヒーを楽しんだり、イベントを開いたりしています。
Mobile SSは、そのような日常の場で屋外電源としてマーケットやワークショップを支えるインフラとしての活用を想定しています。
一方で、万が一の災害時には、非常用電源としてすぐに稼働します。
スマートフォンの充電や通信機器、医療・防災機器への電力供給が可能であり、避難所や公園、学校などへも柔軟に移動できます。
建築申請が不要な可搬型の構造のため、設置後すぐに稼働できることも大きな特徴です。
私たちは、「日常的に使える防災インフラ」という新しい概念を、この場所で実証しています。
分散型エネルギーで、災害に強いまちをつくる
首都圏では、地震や停電への備えとして「分散型エネルギー」の重要性が高まっています。
私たちは、ソーラーパネルと大容量バッテリーを搭載したMobile SSを、そうした社会課題に対する“動く解決策”と位置づけています。
発災時に電力網が寸断されても、Mobile SSは太陽光だけで自立的に発電・供給することができます。
これにより、都市の一角でもすぐに電力を確保し、初動の支援を行うことができます。
また、再生可能エネルギーを使用することで、環境負荷を抑えつつ、ゼロカーボンなエネルギー供給モデルを実現しています。
私たちは、「防災=脱炭素の実践」と捉え、行政や地域との協働を進めています。
エネルギーが“文化”をつなぐ装置へ
Mobile SSの設置を通じて、私たちはエネルギーの新しい価値を伝えたいと考えています。
それは「電気を使うこと」から「電気を感じること」への変化です。
HOME/WORK VILLAGEでは、ソーラーパネルや発電の仕組みを子どもたちが興味深く眺めたり、
地域の人々が「今日はこの電気でレコードを聴いてみよう」と語り合ったりする光景が生まれ始めています。
このように、エネルギーが人と人をつなぎ、自然と共に生きる意識を育てる“文化の装置”になっていることを実感しています。
また、発電量や電力の使用状況がEMS(エネルギーマネジメントシステム)で可視化することで、
住民の方々がエネルギーの循環を身近に感じられるようにもなっています。
こうした小さな体験の積み重ねが、地域の防災意識や環境意識を自然に育てていくと考えています。
公共施設への導入で広がる可能性
私たちは、行政や自治体が公共施設にMobile SSを導入することにも大きな可能性を見ています。
災害対策としてはもちろん、平時には地域イベントや学校教育、環境啓発活動などにも活用が可能です。
たとえば、公園や学校に設置して防災訓練に利用したり、
市民フェスティバルやマルシェの電源として使ったりすることができます。
防災を“日常の文化”として根付かせることで、地域に新しい交流と学びが生まれます。
私たちは、Mobile SSをそのきっかけにしたいと考えています。