CASE STUDY:2025.03.11

福島県大熊町「OKUMA ODYSSEY」イベントレポート

未来の電力「Mobile SS」が照らす復興の地


福島県大熊町で開催された復興交流イベント「OKUMA ODYSSEY」は、東日本大震災の記憶を継承しながら、ゼロカーボンな未来社会への好奇心と挑戦を体現する場として開催されました。
今回は、このイベントにブース出展した移動式EV充電スタンド「Mobile SS(モバイル エスエス)」の取り組みと、大熊町で活動を行う意義、そして会場の様子をお伝えします。



「電気のオアシス」を目指して — Mobile SSのコンセプト

Mobile SSのテーマは、「電気のオアシス」をつくること。災害や停電といった非常時にも、人と社会のエネルギー循環を止めないための新しいインフラを目指しています。
ソーラーパネルと大容量バッテリー、EV普通充電機能を搭載したトレーラー型充電ステーション「MSS-ONE」は、太陽光から発電した電気を蓄え、電気の地産地消を実現。遊休地や自然公園などインフラが届かない場所でも、電源のある新しい交流拠点を生み出します。

「Mobile SS」は、無人KIOSKやイベント電源、アウトドアフィールドでのワークステーション、災害時の非常用電源としても活用可能です。建築申請不要・低環境負荷・短工期という特性を活かし、持続可能なエネルギー社会の入口を現場に届けます。
かつて“サービスステーション(Service Station)”を意味した“SS”は、今では“サステナブルステーション(Sustainable Station)”という新たな意味を担っています。

 

大熊町で活動する意義 — 「マキシマム」から「ミニマム」へ

大熊町は、福島第一原発事故の被災地として知られ、現在は「2050ゼロカーボン宣言」を掲げ、持続可能なまちづくりを進めています。
Mobile SSがこの地で活動するのは、エネルギーの「マキシマム(集中・巨大化)」から「ミニマム(分散・自立)」へと発想を転換する象徴的な試みです。

震災から十余年。かつて都市に電力を送っていた巨大な送電鉄塔の足元で、MSS-ONEは静かに太陽光を受けて発電を開始しました。
その光景は、「電気は自らつくれる」という感覚を強く印象づけるものであり、原子力の時代を経た大熊町だからこそ響くメッセージです。

 

OKUMA ODYSSEY イベントレポート

「OKUMA ODYSSEY」は今年で3回目の開催を迎え、同時開催された「ゼロカーボンフェスティバル」とともに、地域と未来をつなぐ実験の場となりました。
会場は、震災で閉校となった旧・大野小学校を再生した大熊インキュベーションセンター(OIC)。音楽プロデューサー小林武史氏がフェス全体のディレクションを務め、アオイヤマダ、藤巻亮太、Salyuなど多彩なアーティストが出演しました。

イベント電力はすべて、トヨタの燃料電池車クラウンやMIRAIから供給。さらに東北地域の削減活動を支援する形でカーボン・オフセットが実施され、完全ゼロカーボンのイベント運営を実現しました。

Mobile SSは、コンバートEVとともにブースを出展。太陽光で駆動するリスニングバーを展開し、来場者に再生可能エネルギーのリアルな体験を提供しました。テスラジャパンや水素ドローン企業、ペロブスカイト太陽電池の研究を行う東芝エネルギーシステムズなど、国内外の先進プレイヤーも集結し、未来エネルギーの多様な可能性が交差しました。

また、OIC入居企業による展示や、起業家育成プログラムの発表、町内見学ツアーなども行われ、世代を超えて「復興のその先」を考える一日となりました。
大熊町におけるMobile SSの活動は、巨大集中型エネルギーの時代から、分散・自立型の時代へと向かう希望の象徴であり、「電気のオアシス」が復興のイノベーションを照らす光となっています。